某編集者は言った。
「12月は映画で1冊作るから」
私はそんなに数多くの映画を鑑賞するほうではない。決まった映画を時折無性に観たくなる傾向がある。
その中のひとつが『魔女の宅急便』だ。人生で何度観たのかわからない。そのくらい観ている。幼少期撮られた成長ビデオでも、ピンクのトレーナーを着た私が「おこっめで おいこしてぇ」と歌っている姿が記録されている。お米で追い越すとはどんな状況なんだ。当時3歳の私には、横目よりもお米のほうが好みだったんだ。仕方ない。
なんだか魔女の宅急便観たいなぁ…。今回もまた、ふとそう思った。実家にいるときは金曜ロードショーで流れたやつを録画して、DVDに焼いたものを観ていた。初めてレンタルビデオ屋さんで借りた魔女の宅急便。なんだか新鮮。いつもは作り物をしながら観てしまうけど、ちゃんと借りたやつだからと、改めて鑑賞した。
こんなシーンあったっけ? あぁ、この場面ではこんな表情していたんだ。気づくことはたくさんあった。ラジオを点けたら流れてくるルージュの伝言に合わせて歌ってしまうのは、3歳の頃から変わってない。もうちゃんと横目で、と歌えるけど。
私はあの頃はキキだった。13歳でひとり立ちする女の子と同じ目線にいた。でも気づいてしまった。今の私は、もうキキでは、なくなっていた。
今回観て思ったことは、「うわぁ、おそのさんになりたい」だった。美味しいパンの匂い漂う店内で、家族仲良く暮らす。そして13歳でひとり立ちする女の子の応援をしたい。たぶん年齢的なものもあるんだと思うのだけど、できればずっとキキでいたいと思っていたかった。笑
そしてレンタルDVDにも決定的にないものがあった。CMだ。ひとつもそれを挟まない魔女の宅急便。いつも早送りしていたくせに、ちょっと寂しくもあった。ここでCMだ、と頭の中で流れて来るものは、ピンクのトレーナーを着てビデオを観ていたあの当時のそのものだった。
「あやとりや」という名前で活動しているけしごむハンコ作家です。 宗像は初めての就職先だったり、作家として活動するようになってからも、何かと御縁を頂いております。この連載では宗像の事のみならず、日常で心が動いたことをお伝えできたらなと思います。どうぞ、ゆるゆるタイムのお供になれば・・・。